手足口病は通常、軽症で自然に回復する病気ですが、稀に重篤な合併症を引き起こすことがあります。この合併症の発生と、個人の免疫状態や感染したウイルスの種類との間には密接な関係があり、免疫の役割を理解することは、重症化のリスクを認識し、適切な医療介入の判断に繋がります。手足口病の主な原因ウイルスであるエンテロウイルス属は、体内で増殖する際に様々な臓器に影響を及ぼす可能性があります。特に注意が必要な合併症としては、髄膜炎、脳炎、心筋炎、急性弛緩性麻痺などが挙げられます。これらの合併症は、特に乳幼児や免疫力が低下している人に発症しやすい傾向があります。例えば、エンテロウイルス71型(EV71)は、他の手足口病の原因ウイルスと比較して、神経系の合併症(髄膜炎や脳炎)を引き起こすリスクが高いことが知られています。EV71に感染した際に免疫システムがウイルスを効果的に排除できない場合、ウイルスが脳や脊髄に侵入し、これらの重篤な病態を引き起こす可能性があります。このため、EV71が流行している地域や時期には、手足口病の症状に加えて、頭痛がひどい、嘔吐を繰り返す、ぐったりしている、呼びかけへの反応が鈍い、手足の力が抜けるなどの神経症状が見られた場合は、速やかに医療機関を受診することが極めて重要です。個人の免疫の状態も合併症の発症リスクに大きく影響します。例えば、新生児や乳児はまだ免疫システムが未熟であるため、ウイルスに対する防御力が低く、感染すると重症化しやすい傾向があります。また、何らかの基礎疾患がある、あるいは免疫抑制剤を服用しているなど、免疫機能が低下している人も、合併症のリスクが高まります。一度手足口病に感染すると、その原因となった特定のウイルス型に対しては免疫が獲得されます。この免疫は、同じ型のウイルスによる再感染や、再感染による重症化を防ぐ役割を果たします。しかし、手足口病は複数のウイルス型によって引き起こされるため、ある型のウイルスに対する免疫があっても、異なる型のウイルスに感染すれば再び手足口病にかかる可能性があり、その際に合併症のリスクがないわけではありません。